私たちの考え
なぜ、薬剤師が必要なのでしょうか。
また、なぜ医薬分業(医師は処方せんを発行し、薬剤師が処方せんに基づき、薬を調剤する)が必要なのでしょうか。
かつて日本では、法律で規定された医薬分業がほとんど行われておらず、病院の窓口で会計と同時に薬を受け取って帰ることが一般的でした。
「昔のように、病院の窓口で薬がもらえていた時代の方が良かった」
こうした声が今でもあることは、私たち薬剤師の耳にも届くことがあります。
薬剤師は、患者さまを守る薬の防波堤
私たち薬剤師は、処方せんを見たとき、
・処方せん中の複数の薬は、飲み合わせに問題がないか(さらに、過去の処方歴やお薬手帳を確認し、他の病院から処方される薬との飲み合わせにも問題がないか)
・小児の薬であれば、年齢や体重から考えると過剰な薬の量になっていないか
・塗り薬であれば、塗布する部位と薬の強さ・種類に矛盾はないか
・薬が国に承認された際の注意事項(少ない量から投与を始める等)に沿った処方になっているか
等を確認しています。
信頼できるあの先生でも、万が一の万が一、という事があるかもしれない。そんな思いで、一枚一枚の処方せんと薬剤師は向き合っています。
決して、処方せんに書いてあるとおりに、棚から薬を持ってきているだけではないのです。
時代は変わり、薬の種類は増え、切れ味も良くなった
これまで、薬剤師が関与しない施設であっても問題がなかったという意見もあるかもしれません。
しかし時代は変わり、どんどんと切れ味の鋭い、良く効く薬が出てきています。
それでも、これまで問題がなかったから、今後も問題ないと言えるのでしょうか。
例として、緑内障の点眼薬を考えてみましょう。
昭和42年(1967年)に、サンピロ点眼が発売になりましたが、この後はしばらく新薬の発売はなく、
次の画期的な薬は昭和56年(1981年)まで待たねばなりませんでした。
いわば、昭和40年代、50年代は、多くても2~3種類の薬の取扱さえ出来れば、緑内障治療に対応できたわけです。
(途中を省略しますが)現在では、PG系、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、α1遮断薬、副交感神経刺激薬、交感神経刺激薬、α2刺激薬と、
大まかに分類しても7系統の緑内障治療薬が存在し(7系統それぞれに、複数の薬がありますから、トータル30種類程度の薬が存在)、
さらにそれぞれを1本にミックスした合剤と呼ばれる目薬も存在することから、緑内障治療の目薬だけでも、数十種類を管理しなくてはなりません。
緑内障治療薬を1つ例に挙げても、まさに十年一昔。
かつての様に、病院内でお薬をお渡しすることは、様々な面で課題が増えたことがご理解頂けると思います。
また実際、院内処方から院外処方に切り替えた医師より、薬の不安が解消されたと、感謝の声を頂くこともありました。
私たちは、切れ味の鋭い、良く効く薬が増えれば増えるほど、防波堤としての薬剤師の役割は高まると考えます。